塩漬け在庫を「今日のおすすめ」で動かす|在庫起点マーケティングの実践ワークフロー

「仕入れたときは売れると思ったのに、棚に並べたまま動かない」。そんな商品が、倉庫の片隅に積み上がっていないでしょうか。長く売れ残った在庫は、置いておくだけで保管コストがかかり、仕入れに使った資金を滞らせ続けます。値下げをしても反応がなく、扱いに困っている方も多いはずです。

この記事で紹介するのは、単発の値下げではありません。「今日のおすすめ商品」というコーナーを軸に、コラム・セール・データ分析を1週間単位で組み合わせ、売れにくい在庫を計画的に動かしていく運用の設計です。毎日の更新を無理なく続けながら、その結果をデータで検証し、翌週の運用に反映していく。その具体的な手順を、順を追って説明します。

そもそも「塩漬け在庫」はなぜ生まれるのか

塩漬け在庫(長期間売れず、在庫として倉庫に滞留している商品)は、多くの場合「仕入れた時点では売れると見込んでいた」商品です。流行が過ぎた、競合が増えた、季節を外した。理由はさまざまですが、共通しているのは「気づいたときには、売るためのきっかけを失っていた」という点です。

やっかいなのは、塩漬け在庫が静かにコストを生み続けることです。保管スペースを占有し、棚卸しのたびに数えられ、仕入れに使った資金は回収されないまま固定化されます。それでも日々の運営に追われると後回しになりやすく、気づけば1年単位で動いていない商品が積み上がっていきます。

塩漬け在庫には2つのタイプがある

塩漬け在庫を動かすうえで、まず押さえておきたいことがあります。塩漬け在庫は、ひとくくりにできません。大きく2つのタイプに分かれ、有効な打ち手が異なります。

1つ目は「アクセスはあるのに、買われていない」タイプです。商品ページは見られているのに、CVR(コンバージョン率。サイト訪問者のうち購入に至った割合)が低い。この場合は、ページの見せ方・価格・納期表示など、購入の直前でつまずく要因に原因があります。

2つ目は「そもそもアクセスがない」タイプです。商品ページにたどり着く人が少なく、見られないから売れない。この場合は、まず商品に人を集める導線づくりが先になります。

多くの在庫対策は「とにかくアクセスを増やす」方向に偏りがちですが、1つ目のタイプにアクセスを足しても、購入直前でつまずく構造が変わらなければ成果は出ません。逆に2つ目のタイプにページ改善だけを施しても、見る人がいなければ意味がありません。タイプの切り分けが、最初の分かれ道です。

この記事で扱うデイリーコンテンツの運用は、主に2つ目の「アクセスがない」タイプに効きます。塩漬け在庫に毎日「見られる理由」を与えていく施策だからです。

解決の方向性:毎日「今日見る理由」を商品に与える

アクセスのない商品を、ただトップページに並べても人の目には留まりません。「おすすめ」と書かれた商品が置かれているだけでは、訪問者にとって「今日、それを見る理由」がないからです。

そこで有効なのが、「今日のおすすめ商品」というコーナーをつくり、そこに「今日のコラム」を添えるという考え方です。コラムの題材は、その日にちなんだ話題、たとえば記念日、その日の出来事、季節の話などから始め、そこからおすすめ商品へと自然につなげます。商品の魅力やおすすめする理由を、読み物として面白く伝える。これにより訪問者は「今日はこれを読んでみよう」という動機を持って、サイトを訪れてくれます。

ECサイトのトップに「今日のおすすめ商品」コーナーを設けて記事冒頭を表示し、続きは独立したブログ記事で読んでもらう流れを示した図

この記事では、こうした「コラム・おすすめ商品・セール」を毎日届ける一連の取り組みを「デイリーコンテンツ」と呼びます。

ここで重要なのが、コラムの置き場所です。コラムをトップページに直接書き、毎日上書きしていく方式では、昨日のコラムは消えてしまい、何も蓄積しません。おすすめしたいのは、コラムを1本ずつ独立したブログ記事として公開し、トップページにはその冒頭部分だけを抜粋して掲載する形です。続きはブログ記事で読んでもらう。こうすれば、1年で365本の独自コンテンツがサイトに積み上がり、サイト全体の土台になっていきます。

塩漬け在庫を動かす5ステップ・週次ワークフロー

デイリーコンテンツを「毎日その日に作業する」と考えると、続きません。現実的なのは、1週間分をまとめて設計し、配信は予約で自動化する進め方です。ここでは、makeshop公式アプリ「ストックビジョン」(在庫データを起点に、販促・接客・分析を連携させるmakeshop公式アプリ)を使った週次ワークフローを、5つのステップで紹介します。

動かす商品を選ぶ→コラムを組み立てる→セールを予約→バナー切替→結果検証の5ステップが円環状に循環する週次ワークフロー図

ステップ1:動かす商品を「商品別CVR分析」で選ぶ

最初に、その週に動かす塩漬け在庫を決めます。ここで使うのが商品別CVR分析(商品ごとの表示回数・注文数・CVR・売上・収益・在庫を一画面で可視化する機能)です。

在庫数が多く、表示回数の少ない商品を抽出すれば、「アクセスがない塩漬け在庫」が一覧で見えてきます。勘や記憶ではなく、データで「今週の主役」を選ぶ。これがワークフローの起点です。

ステップ2:「今日のおすすめ商品」と「今日のコラム」を組み立てる

動かす商品が決まったら、1週間分の「今日のおすすめ商品」と、それぞれに添えるコラムを用意します。

コラムは、その日の記念日や出来事を入り口にしつつ、おすすめ商品のベネフィットや選んだ理由へと結びつけ、1本の読み物に仕上げます。この作業は、生成AIを活用すると効率的に進められます。ただし後述のとおり、AIに丸投げで量産するのではなく、自社ならではの情報を組み込むことが、コラムを「資産」に変えるうえで欠かせません(詳しくは最後の章で説明します)。

ステップ3:1週間分のセールを「タイムセール自動化」で予約する

おすすめ商品には、セールを組み合わせます。使うのはタイムセール自動化(セールの開始・終了時刻を事前予約し、割引などを自動運用する機能)です。

この機能はスケジュール実行で自動運用できるため、週のはじめに1週間分のセール開始・終了時刻と割引をまとめて設定しておけば、あとは予約した時刻どおりにセールが切り替わります。深夜や早朝に手作業でセールを設定し直す必要がありません。

セールの割引率や対象は、最初から正解が分かるものではありません。試行錯誤しながら、ステップ5の検証結果をもとに調整していきます。

ステップ4:コラム・バナーを「キャンペーン自動配信」で切り替える

セールに合わせて、トップページのバナーや告知も日替わりで切り替えます。ここで使うのがキャンペーン自動配信(バナーや告知を時間指定で自動的に切り替える機能)です。

「今日のおすすめ商品」「今日のコラム」へ誘導するバナーを、あらかじめ時間指定で登録しておきます。どのバナーをいつ出すかは運営者が判断し、設定後はその予約に従って自動的に切り替わる。この「手動で判断し、実行は自動化する」形が、無理なく毎日続けるための仕組みです。

なお、デイリーコンテンツの運用は「全自動」ではありません。週に一度、動かす商品を選び、コラムを用意し、配信を設計する作業は必要です。自動化されるのは、その設計どおりに毎日セールとバナーを切り替える「実行」の部分です。

ステップ5:結果を「商品別CVR分析」で検証し、翌週に反映する

1週間が終わったら、結果を商品別CVR分析で振り返ります。

注目するのは、セールを実施した日としていない日とで、対象商品の表示回数・CVR・売上・収益がどう変化したかです。セールで動いた商品、コラムが効いた商品、反応がなかった商品が見えてきます。

この検証結果が、翌週の「今日のおすすめ商品」選びと、セール内容の調整材料になります。動かす商品の選定(ステップ1)に戻り、サイクルがもう一周する。この「分析・実行・検証・分析」の週次サイクルが、デイリーコンテンツ運用の中心です。

なぜこれが「在庫起点マーケティング」なのか

ここまでの5ステップを振り返ると、すべての出発点が「在庫データ」であることに気づきます。動かす商品は在庫数と表示回数から選び、セールは在庫商品に設定し、結果は在庫商品ごとのスコアで検証する。在庫データが、販促・接客・分析の起点になっています。

在庫起点マーケティングとは、在庫データを在庫管理だけでなく、納期表示・割引・ランキングといった販促・接客・分析の起点として活用する考え方です。デイリーコンテンツの運用は、この考え方を1つの週次ワークフローに落とし込んだ実践例といえます。

分析だけでは在庫は動きません。実行だけでは、何が効いたのか分かりません。分析と実行と検証が1つのループでつながって初めて、塩漬け在庫は計画的に動いていきます。

在庫起点マーケティングの考え方そのものは、別記事「在庫データを起点にECの販促を変える|在庫起点マーケティングとは」で詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

デイリーコンテンツを始めるには

デイリーコンテンツの週次ワークフローは、商品別CVR分析・タイムセール自動化・キャンペーン自動配信の3つの機能を組み合わせて回します。

これらの機能は、makeshop公式アプリ「ストックビジョン」で提供しています。プランによって使える機能の範囲が異なり、商品別CVR分析はLightプランから、デイリーコンテンツの軸となるタイムセール自動化・キャンペーン自動配信はStandardプラン(月額20,000円)以上でご利用いただけます。

ストックビジョンは14日間の無料トライアルをご用意しています。まずは商品別CVR分析で、自社の塩漬け在庫がどちらのタイプかを確かめるところから始めてみてください。導入にあたっては、専任スタッフによる初期設置のサポートも無料でご利用いただけます。

デイリーコラムを「資産」にする設計の注意点

最後に、デイリーコンテンツを長く続けるうえで欠かせない注意点をお伝えします。これは施策の成否を分ける重要なポイントです。

AIで量産しただけの没個性的なコラムと、自社の一次情報を主役にした価値あるコラムを左右で対比し、量より質の重要性を示した図

AIで量産しただけのコラムは、逆効果になりうる

コラム制作に生成AIを使うこと自体は、効率化の有効な手段です。ただし、記念日や一般的な雑学だけをAIに書かせ、毎日量産すると、検索エンジンから「価値の薄いコンテンツを大量に生成している」とみなされるおそれがあります。その場合、サイト全体の評価をかえって損なうこともあります。「毎日更新しているから検索に強くなる」とは限らない、ということです。

分岐点は「自社にしか書けない情報があるか」

同じAI活用でも、結果を分けるのは1点です。そのコラムが、AIに少し指示すれば誰でも作れる内容なのか、それとも自社にしか書けない内容なのか。

記念日や出来事は「今日らしさ」を出す入り口に留め、コラムの中心には自社固有の情報を据える。そうすれば、AIで効率的に作っても、1本1本が独自の価値を持つ記事になります。AIの役割を「ゼロから創作させる」から「自社が持つ情報を記事の形に編集させる」へ変える、と考えると分かりやすいでしょう。

自社の「一次情報」を棚卸しする

では、自社にしか書けない情報とは何か。商品の原材料、開発の背景、作り手の話、専門スタッフの知見。こうした「自社の現場にしかない情報」が一次情報です。

たとえば化粧品なら原料となる植物の解説、家具なら木材の種類や職人の手仕事、食品なら産地や生産者の声。商材ごとに、語れる一次情報は必ずあります。自社の商品を棚卸しし、「この商品について、うちだから書けることは何か」を洗い出すことが、コラムの質を支えます。

専門家のコメントは「署名」で載せる

開発者や専門スタッフのワンポイントアドバイスをコラムに盛り込むときは、「監修」とだけ書くのではなく、肩書きと名前を添えて掲載することをおすすめします。誰の経験と専門性に基づく情報なのかが明確になり、読者にとっての信頼性が高まります。

商材によっては表現の規制に注意する

化粧品や健康関連の商品など、効果・効能の表現に法律上の制約がある商材では、コラムでも断定的な表現を避ける必要があります。「○○に効く」と言い切るのではなく、伝統や文化、植物としての特徴といった事実の範囲で語る。コラムの執筆ルールに、この表現の線引きをあらかじめ組み込んでおくと安心です。

よくある質問

毎日コラムを書き、セールを設定するのは大変ではありませんか?

毎日その日に作業するのではなく、1週間分をまとめて設計するのが基本です。コラムは生成AIを活用して効率的に用意し、セールとバナーの切り替えはタイムセール自動化・キャンペーン自動配信の予約機能で自動化します。日々の手作業は最小限に抑えられます。

セールの割引で利益が減ってしまいませんか?

塩漬け在庫は、置いておくだけで保管コストと資金の固定化というコストを生み続けます。商品別CVR分析は売上だけでなく収益も商品ごとに可視化するため、「どこまで割引してよいか」を収益ベースで判断できます。やみくもな値下げではなく、データに基づいた割引設計が可能です。商品別の収益分析の考え方は、別記事「『どの商品が利益を出しているか分からない』を解決する商品別収益分析」でも解説しています。

デイリーコンテンツの運用には、どのプランが必要ですか?

商品別CVR分析はLightプラン(月額8,000円)から利用できますが、デイリーコンテンツの軸となるタイムセール自動化・キャンペーン自動配信はStandardプラン(月額20,000円)以上が必要です。

まとめ

棚に積み上がった塩漬け在庫は、置いておくだけで保管コストと資金の固定化を生み続けます。これを動かす鍵は、単発の値下げではなく、毎日「今日見る理由」を商品に与え続けることです。

「今日のおすすめ商品」と「今日のコラム」を軸にしたデイリーコンテンツは、商品別CVR分析で動かす商品を選び、タイムセール自動化とキャンペーン自動配信で1週間分のセールとバナーを予約し、結果を商品別CVR分析で検証する、という週次サイクルで運用します。毎日その日に作業するのではなく、1週間分をまとめて設計し、実行を自動に任せることで、無理なく続けられます。

この運用は、すべての出発点が在庫データにある「在庫起点マーケティング」の実践です。そして長く続けるうえで欠かせないのが、コラムをAIで量産するのではなく、自社にしか書けない一次情報を中心に据えること。分析と実行と検証が1つのループでつながって初めて、塩漬け在庫は計画的に動いていきます。

 商品ごとのCVR・売上・収益・在庫を一覧で見える化し、「売れ筋」と「稼ぎ頭」を切り分ける。ストックビジョンは、makeshopの売上データを商品単位で可視化するEC販促自動化アプリです。14日間の無料トライアルで、まずは自社の数字をご覧ください。

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